異世界おじさん
高校時代に一家離散し、フリーターをしていた青年、たかふみは、交通事故で17年間、昏睡状態(こんすい)となっていたおじさんが目覚めたとの知らせを受ける。おじさんを引き取ろうにも、生活が困窮したたかふみにそんな余裕はなく、親戚一同もおじさんの処遇を決めかねていた。再会したおじさんは奇妙な呪文を唱え、異世界「グランバハマル」から帰って来たと語っており、明らかに様子のおかしいおじさんを見て、たかふみは即座に見捨てようとするが、たかふみの目の前でおじさんは実際に魔法を使ってみせる。すると、たかふみは手のひらを返し、おじさんの力で食っていこうと考える。こうして二人は、YouTubeで動画配信者として活動し始めるのだった。そんな中、異世界にロマンを馳(は)せるたかふみは、おじさんから異世界の冒険譚(たん)を聞いていた。記憶の精霊の力を使い、おじさんの過去を動画のように見始める二人だったが、おじさんの異世界生活は過酷そのもの。醜い容姿であることで魔物と間違われて殺されかけたり、仲間もできずたった一人で冒険を続けていたのだ。そんな中、おじさんは一人の人物について語り始める。おじさんはロクでもないエルフだったと言いながらも、そのエルフの言動はいわゆる「ツンデレヒロイン」そのもので、それを聞いたたかふみは思わずそのツンデレエルフに思いを馳せるのだった。
ツンデレエルフ
たかふみは町中で偶然、疎遠になっていた幼なじみの藤宮澄夏と再会。旧交を温め、彼女を家に招待するが、ひょんなことからおじさんが魔法を使えることが澄夏にバレてしまう。そして澄夏は、たかふみの家に入り浸るようになり、おじさんの異世界冒険譚をいっしょに聞くようになるのだった。そんな中、おじさんは異世界でRPGのような経験をしたことを語り始める。復活した伝説のドラゴン「魔炎竜」を倒すため、魔炎竜を唯一倒せる伝説の神剣「凍神剣」を求めて、おじさんは氷の一族の末裔、メイベル=レイベールのもとを訪れる。しかし、凍神剣を手に入れるためには、メイベルの凍った心を解き放つ必要があった。メイベルから、幼い頃に見た花を採って来て欲しいと頼まれるおじさんだったが、実はRPGのおつかいイベントが苦手なおじさんは、このお願いをスルーしてボスの魔炎竜のもとへと向かう。苦戦しつつもこれを打ち倒し、RPG的イベントを総スルーするのだった。役目から解放されるメイベルだったが、実は氷の一族は役目を盾にニート生活を満喫しており、役目を失ったことでその生活を失ってしまう。おじさんを逆恨みするメイベルだったが、それも筋違いだとすぐ理解し、おじさんと交流する中で少しずつ前向きになる。しかし、おじさんのズレた言動がメイベルを傷つけ、二人は戦闘を開始。そこにおじさんをストーカーしていたツンデレエルフも合流し、二人の様子を見て事情を察したツンデレエルフはメイベルに加勢し、二人がかりでおじさんを倒すのだった。
万能話手
ツンデレエルフとメイベル=レイベールはお互いに事情を話し合うが、その中で伝説の神剣「凍神剣」の由来について語る。実は凍神剣は日本から転移してきた武士が神に授かったもので、転移者には何かしらの力が与えられていたことが判明する。しかしそれを聞いていたおじさんは、そのことにまったく心当たりがなく、記憶の精霊の力を借りて、さらに過去の情報を探り始める。そしておじさんは、異世界に来た直後のことをたかふみたちに語って聞かせる。おじさんは異世界に来た直後に、通りすがりの冒険者に魔物と間違われ、殺されかけたのだ。言葉も通じず、一方的に殺されかけたおじさんは、必死に「言葉が通じればわかり合えるのに」と願い、「翻訳」の力を手にしていた。しかし場は混沌としており、力を与える神もかなり手抜きをしていたため、おじさんは現在に至るまでそのことにいっさい気づかずにいたのだ。たかふみたちとの話し合いの結果、翻訳の力は「万能話手」と名づけられる。そしておじさんは、翻訳の力を手にしてからを語り始める。おじさんはその力で冒険者たちを説得するが、今度は言葉を話せる魔物として見世物小屋に売られる。二束三文で買い叩(たた)かれたたうえ、そのまま店主にどうでもいい存在として忘れ去られてしまう。檻(おり)の中で1週間過ごしたおじさんはそんな極限状態の中、精霊と対話することに成功する。そして、おじさんは精霊魔法の力を身に着けて脱出し、異世界生活を始めるのだった。
精霊魔法
おじさんとたかふみは万能話手の検証をし、そのためにおじさんの過去の記憶を見る。その中で、おじさんは勇者であるアリシア=イーデルシアとの出会いと再会について話し始める。おじさんはゴブリンの軍団に襲われる村でアリシアとその仲間たちと出会い、彼らと共闘して交友を育む。しかしアリシアが、おじさんの秘密を目撃していたのを知り、おじさんは証拠隠滅のためにアリシアの記憶を消して立ち去ったのである。だが、おじさんはアリシアが魔物退治をしているところに再び遭遇。そこでおじさんは、偶然に翻訳の力が作動し、魔物の言葉が理解できたことを思い出す。だが、話は万能話手の検証からアリシアのことに移り、たかふみたちはアリシアとのその後についておじさんに聞く。実はアリシアはゴブリンの軍団を倒した際の記憶をおじさんが消したせいで、アリシアが大量の魔物を倒したことになっていた。アリシアは政治的な問題もあって、その手柄を誇張され勇者に就任し、分不相応な立場に困惑していたのだ。おじさんは再びアリシアたちと共闘して交友を育み、今度は記憶を消さずに別れるのだった。その後、アリシアの勇者任命に何者かの陰謀を感じたおじさんは、王都へと向かう。王国軍の総司令官であるリカルド=マークフェルドを説得するも、王国騎士となっていたメイベル=レイベールが何者かにあやつられ、おじさんはメイベルと戦うこととなる。おじさんはメイベルの呪縛を解き、その痕跡から黒幕は司祭を務めるカーン=ゼルネガンであることを暴く。カーンは勇者を利用して軍事費を増大させ、その一部を寄付という形で、懐に入れようとしていたのだ。おじさんはカーンの野望を阻み、リカルドに別れを告げて、王都を立ち去るのだった。
煉獄の湯
たかふみは、おじさんが王都を立ち去ってからの話を聞く。おじさんは王都を立ち去る際に、かっこつけて変身魔法で魔炎竜の姿に変身して立ち去ったが、うっかり魔法が解けなくなり、そのまま1か月過ごしていた。おじさんを追いかけてきたツンデレエルフのお陰でおじさんは何とか元に戻るが、ツンデレエルフは質の悪い商会から借金をしており、頭取であるハーゲン=レグファルケンの手によってピンチに陥ってしまう。おじさんは助けられた借りを返すべく、ツンデレエルフをハーゲンの呪縛から解放し、借金の返済の代わりにハーゲンに高価な天星石の指輪を手渡すのだった。借金取りたての脅威から逃れたおじさんとツンデレエルフは、ツンデレエルフの案内で温泉に入りにいくこととなる。おじさんはかつて転移してきた日本人が作った温泉宿「煉獄の湯」にたどり着き、そこで温泉を堪能しつつ、アリシア=イーデルシアと再会する。二人っきりの時間を邪魔されて機嫌を悪くするツンデレエルフだったが、アリシアたちの情報でツンデレエルフの旅の目的である古代魔導具を見つける。一方、温泉で和気藹々(あいあい)と過ごすおじさんたちであったが、そこに突如魔物が襲来。さらに魔物の中には魔法を封じる「魔封鳥」もおり、おじさんはその力を封じられてしまう。ピンチに陥るアリシアたちであったが、アリシアがおじさんとの冒険で手に入れた「救世のワンド」の秘めたる力を解放し、魔物たちを打ち倒すのだった。戦闘のあと、ひと段落ついたおじさんはアリシアと対話。彼女にとって記憶は何より大切であることを知ったおじさんは、過去にアリシアの記憶を消したことを告白し、お互いの事情を打ち明け合って和解するのだった。
荒ぶる神の力
おじさんは「唄う魔物」と戦った経緯を、たかふみたちに語って聞かせる。おじさんは温泉旅館を立ち去って1か月ほど経った頃、森の中で夜に歌い続ける魔物の噂(うわさ)を聞き、討伐のために森を訪れる。しかし、その正体は王国騎士をクビになり、森の中で野宿していたメイベル=レイベールだった。実は歌が得意なメイベルに、日本のゲームセンターの歌を歌ってもらい、おじさんは異世界で故郷に思いを馳せる。だが、おじさんをストーカーしていたツンデレエルフがそれを目撃。ツンデレエルフは黒い嫉妬の炎を燃え上がらせ、おじさんに詰め寄るが、そこで初めてお互いの本名を知り、おじさんから「翠」というあだ名も付けてもらう。一転して機嫌をよくしたツンデレエルフは、おじさんとメイベルの旅路に同行し、三人は古びた祠(ほこら)にたどり着く。祠は神が災いを封じた神聖な場所で、異世界人にとっては加護を与えてくれるありがたい場所だった。しかし、人間不信のおじさんはそれをまったく信じず、祠を破壊。封じられた災厄である荒ぶる神の力を解放し、それと戦おうとする。ボスを倒せば先に進めるという、ゲーム的思考で災いを目覚めさせたおじさんだったが、強大な力を持つ神の力にあやつられてしまう。危機に陥るツンデレエルフたちであったが、たまたま魔物討伐で近くを通りかかったアリシア=イーデルシアの協力で、おじさんは正気を取り戻す。そしておじさんは、不死身に近い力を持つ荒ぶる神の力を倒すため、魔炎竜を復活させてぶつけるが、魔炎竜は神の力を取り込んで神化魔炎竜へと進化し、より強大な脅威へと成り果てる。おじさんと仲間たちはそれぞれが全力を尽くし、神化魔炎竜を打ち倒すのだった。そしておじさんは、神化魔炎竜を滅びる際の光景を見て、日本帰還の手がかりを見つける。
投獄
神化魔炎竜の戦いは周囲を騒がせることとなり、おじさんは首謀者として捕らえられる。処刑されるおじさんを救うため、ツンデレエルフやアリシア=イーデルシアたちは処刑場に向かうも、その寸前、ハーゲン=レグファルケンの部下が処刑場に乱入し、おじさんを連れ去ってしまう。ハーゲンはおじさんにもらった指輪が呪いの指輪と化し、抜けなくなって困っていたのだ。ハーゲンはおじさんの仕業と思うものの、おじさんにとっても偶発的に呪いが発生したものでどうしようもなかった。おじさんは呪いを解くため、ハーゲンをリカルド=マークフェルドに引き合わせる。また、処刑騒動はリカルドの与り知らぬ出来事で、彼の部下の力を借りて、騒動の鎮圧を行うことを決める。処刑場に戻ったおじさんは仲間たちと合流し、騒動を鎮めようとするが、おじさんのミスでハーゲンの部下であるドルドール=レクスドルが大ケガを負ってしまい、おじさんは再び投獄。さらにおじさんは祠を壊し、荒ぶる神の力を復活させたことは事実であるため、その責任を取って全財産を賠償金代わりに払い、無罪放免となるのだった。そして自由の身となったおじさんは、ツンデレエルフとメイベル=レイベールと合流し、彼女たちと新たな地へと旅立つのだった。